森のリトリートに行った話 ②2日目

森のリトリート 2日目の話

森のリトリートに行った話①からの続きです

さて、2日目。

朝5時台に一度目覚めて外に出ると、薄曇りだった。居合わせた3人で静かに佇む。山の景色があるだけで、言葉は要らない気がした。グレーの空がだんだんと薄紫とピンクのグラデーションへと明るさを増す。

その日は中日。朝から夕方まで、丸一日を森の中で過ごす。前日の寒さからの警戒心で、どのくらいの服装で行こうか、天気はどうかと思案する。

リトリートをサポートしてくださるスタッフは複数いて、そのうちの「HOME」担当のくりりんが、朝ご飯の後に1人ずつにおにぎりを作って持たせてくれた。ずっしりと温かい包みを受け取ると、その喜びとこれから冒険に出るワクワク感の高まりとで、遠足の日の子供みたいな童心に返った。みんなからも笑顔がこぼれる。ありがたい。

昨日と同じ山を登る。今日は自分のペースで、ゆっくりと。
昨日と同じ森に入る。
『自分の場所』を求めて、森を感じ取ってゆく。
この日は風が穏やかだった。
昨日とは違う場所に足を踏み入れる。

横倒しになって宙に浮いている木にまたがってみると楽しい気分になる。陽の当たる枯葉の上に寝転がるとまどろんだ気分になる。目に入った見たことのないまぁるい虫は、森の住民なのに歩き方がどうにもたどたどしくて可笑しく、思わずスケッチをする。

木々から芽吹く新しく柔らかな葉、枯れて朽ちてゆく古く乾燥した枝葉、様々な段階の命がただ同じ時空の中で繰り返しをしている。
特別なものなど何もないのだという感覚と、全ては無常であるという感覚、そんな中にたゆたっていた。

お昼の笛の合図で集合し、それぞれの話をシェアしながらおにぎりを頬張る。ずっしりだと感じていたのに、あっさり消えていった。「森の中のおにぎり」は、反則級に美味しい!幸せ!

前日からみんなとは既に打ち解けていて、シェアする話にもそれぞれの特徴が分かるようになってきていた。まるで絵画や音楽といった芸術作品にでも触れてきたかのように美しい旋律で言葉を奏でる人、日常の都会生活と森とのコントラストから脱思考の試みに浸っていこうとする人、など色々。

私は…なんなんだろう、あまりにここにいることが普通すぎて分からない。ここは自分の内側の世界であって、外に出ていないから分からないのかもしれない。そんな風に感じていた。

 

午後の部。

朝とはまた違う方向に足を延ばす。山頂にお社があるとのことだったので、そこを目指す。途中、広葉樹の森の上にまたしても現れた一糸乱れぬ針葉樹の三角地帯の斜面に、ゾワッと体感温度が下がった。

昨日、この整列ぶりに、就活生や新入社員を思い出すという話をした所だ。同じ色のスーツ、同じような髪型で、ずらりと並ぶ日本の若者(特にエリート)達。どうしてもその姿を重ねずにはいられなかった。

「この杉の木たちは、人に手を入れられることなく自身の意思で育つとしたら、どんな姿になりたかったんだろう…。」

初日からの問いだった。

再びそんな想いをよぎらせながら、山頂に進む。お社があった。こぢんまりとしているが周囲を綺麗に整地し、麓の人がここまで通って手入れをされていることが分かる場所だった。お邪魔させていただいているご挨拶に手を合わす。少しゆっくりして戻ろうとしたその時!

意識の端に何かを捕らえた。と思った刹那、それが目に入った。

 

神々しく静かに立つ、自然の姿の杉の木だった。

枝払いをされていないその杉の木は、無数の枝を方々に伸ばしていた。それはまるで千手観音像のように美しく。螺旋のようにバランス良く配置された枝は上に向いて曲線を描いている。

「そっか…こうなるのが本来の意思やったんやね…。」

堂々とした力強い姿をしばらく眺めた後、反対側にももう一本、同じような木があるのを見る。こちらも先ほどよりは若干控えめながら、天を仰ぎ見るようにぐんと胸を張っているように見える。

そうか、この2本は鳥居か狛犬かのように、参道から聖域に入る部分に左右に立っているんだ。それ以外の木の枝は払われている。先人の山に対する敬意や畏怖の念、林業への安全祈念や地域の発展祈願なども感じ取れる。

再び木の姿に視線を戻す。とにかく伸びたいと思った方向に枝を出す。何かの事情で育つことができない枝は自然に枯れている。この木達は環境が優遇されているからバランス良く育ったけれど、置かれた環境によってどこに伸ばせるかは変わってくる。でも、どこにいたとしても、枝を伸ばすことをやめようとはしないだろう。

あぁ、人間も、こんな風に貪欲に手を伸ばせばええんや。思いついたこと片っ端からやってみてもええやん。伸びない枝は勝手に枯れる。けど、枝を伸ばすごとに張った根は、見えない所で自分を支える。枝を伸ばすことをせんかったら、根も張らへんのやわ。そんなことを思った。

実際、密集地帯で好き放題に枝を伸ばすかどうかは分からない。木の種類によって持っている性格というか、生きる戦略のようなものも違うらしい。山頂から降りて、また新たな場所を散策しながら、樹々の共生と持続可能な森、社会に想いを馳せた。

 

【2日目の気付き】

◇ やりたいことに、迷わず手を伸ばし続けよう! ◇

 

* * * * * * * * * * * *

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